特任館長 ごあいさつ

最終更新日令和5年5月2日ページID 026160

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ごあいさつ

特任館長 榊原 悟
ごあいさつ
 岡崎市美術博物館は、開館当初より「マインドスケープ・ミュージアム」を称しています。現在(いま)も当館の印刷物などには、ほとんどにこのロゴマークが入っているはずです。これは当館の活動の基本方針を「心を語るミュージアム」に置きたい、との思いから出たものです。
 人間の深い内面が生み出した表現、造形を研究し、その成果を作品・資料という具体的なものを通じて提示したい――当館の理想とするところですが、この活動の基本を、もう一つの当館の基本コンセプトと結びつけることで、さらに多彩な展覧会の開催を可能にさせました。
 それは岡崎が徳川家康(1542~1616)生誕 の地であることです。そこから家康の生まれ活動した時代=16世紀後半から17世紀の歴史・文化・文物の研究と展示とを基本とする活動の指針が定められました。しかもその時代は、まさしくヨーロッパの大航海時代の後半期=バロックの時代です。言うまでもなく西と東の政治、経済そして文化が大規模に接触しました。「家康の生きた時代―東と西の出会い」や「大ザビエル展」をはじめ、鎖国、阿蘭陀(オランダ)、平賀源内など、時代は異なりますが、明確に西と東を意識した展覧会はこの活動の指針に沿うものです。カラヴァッジオやルーベンスを代表とするバロック絵画の展覧会もそれでしょう。そこに見るドラマチックな光と陰の表現に宿る深い精神性は、「マインドスケープ・ミュージアム」を標榜する、わが岡崎市美術博物館が取上げるべきテーマでしょう。さらにそれはシュルレアリスムなど20世紀の心の表現を検証する展示へと拡がっていきました。
 一方、岡崎市美術博物館には、郷土博物館としての役割も期待されています。徳川家康を中心に、その家臣団の事蹟を検証することや、市内の寺社に伝えられた、岡崎ゆかりの文化財を発掘、調査研究し、展覧会を通じて広くその価値や意味を知って貰うことです。もちろんこれには学芸員の日々の地道な活動が求められますが、すでにその成果をいくつかの展覧会にまとめています。本多忠勝はじめ徳川四天王に係わる展示や、三河の禅林、浄土宗寺院に伝来した名宝の紹介、三河念仏の源流を検証する試みです。岡崎の俳人鶴田卓池展は、江戸俳諧の研究に一石を投じたものとして話題を呼びました。今後は検証する対象を近世からさらに遡り古代・中世の岡崎や、下っては近代の岡崎に、またその対象地域も広く三河全体に拡げ、その中での岡崎を考えてみることも必要でしょう。

 岡崎市美術博物館は平成8年(1996)7月の開館以来27年、その間、160回以上の展覧会を開催し、120万人以上の方がたのご来館がありました。これもひとえに岡崎市民はじめ皆さま方のご支援とご理解の賜物と感謝申し上げます。
 それにつけても思うのは、開館以来の懸案である本館建設問題です。岡崎市および三河の歴史と文化を知り、さらに未来への展望を開く上でも、そうした資料を展示するための常設室を含む本館棟は必須でしょう。幸いにも寄託品も含め近年、岡崎市美術博物館に収められた郷土資料は目を見張るものがあります。それらを展示し活用することは郷土岡崎に資するところ甚大であるに違いありません。地域文化発信の拠点としての本館建設を改めて強く希望すると共に、市民はじめ関係各位のさらなるご理解とご支援をお願いする次第です。
 なお、岡崎市には別に「おかざき世界子ども美術博物館」と「岡崎市美術館」、2つの施設があります。それぞれ個性ある活動を展開しています。あわせてご支援ください。

令和5年5月

 

 

お問い合わせ先

美術博物館

電話番号 0564-28-5000ファクス番号 0564-28-5005

〒444-0002岡崎市高隆寺町峠1番地
開館時間 10:00から17:00まで(最終の入場は16時30分まで)