過去の展覧会 「ひらいて、むすんで」

最終更新日令和6年7月24日ページID 040192

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過去の展覧会  「ひらいて、むすんで 」 

会 期: 令和6年4月13日(土曜日) から 令和6年6月16日(日曜日) まで

 当館は開館した1996年当初より「心を語るミュージアム」として、心を伝え、心の作用がつくり出した作品資料の収集や展示活動を行ってきました。このコンセプトは20世紀末であった当時の過剰な物質文化の追求を反省し、精神文化とのバランスを問い直そうとする態度から生み出されたものでした。
 現代では多様な人が暮らしやすく、またサステナブルな在り方が追求されている一方で、私たちの心は疫病や災害、国際情勢や景気変動により、寄る辺ない舟のように揺れつづけています。私たちが文化的で豊かに生きるには、改めて「心を語る」ことに向き合う必要があるのではないでしょうか。
 私たちが自分を語るとき、自分の全てを他者に伝えるのは不可能であるため、選択や省略、場合によっては誇張や変形といった編集作業を加えます。それは、様々な場面で振る舞いが異なる自分の断片を繋げて、ひとりの人物として一貫させるように創作することです。自分を語ることは、自分の断片を「むすぶ」と同時に、語ることで自分を「ひらく」表現であると言えるでしょう。
 ベルリン在住の美術作家である手塚愛子は絵画の探求から織物に着目し、その糸を解体することで織られた時間を辿りながら、文化や社会制度の歴史と構造に目を向けます。彼女は織物を「ひらく」ことで再構成し、過去の出来事と現在を織りなおして新たな回路に「つなぐ」ことを視覚的に表現します。本展は「ひらく」「むすぶ」という視点から絵画や彫刻、映像やインスタレーションなど22名の美術作家による作品を紹介するものです。
 作品の声を聞き、「心を語る」ことを考える機会となれば幸いです。

teduka手塚愛子《閉じたり開いたり そして勇気について(1)》2023年 作家蔵


開館時間・休館日・観覧料

名称 ひらいて、むすんで
主催 岡崎市美術博物館、中日新聞社
会場 岡崎市美術博物館
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 毎週月曜日、4月30日(火)、5月7日(火) ※ ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館
観覧料 一般[高校生以上]1,000円(900円) 小中学生500円(450円) 

*展覧会限定フリーパス「Limi‐pass(リミパス)」は1,500円
*( )内は20名以上の団体料金

*各種障がい者手帳の交付を受けている方とその介助者1名は無料

*未就学児は無料 
*岡崎市在住・在学の小中学生は無料(要証明書) 














 


展示作品作家・展覧会構成・出品リスト   

出品リスト

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展示作品作家

井口直人、植松ゆりか、OJUN、岡崎乾二郎、岡部志士、岡村桂三郎、鬼頭健吾、国島征二、ゴードン・マッタ・クラーク、サム・フランシス、ジョアン・ミロ、染谷亜里可、ツァイ・チャウエイ、手塚愛子、中島晴美、西村一成、額田宣彦、ハンス・ベルメール、真坂亮平、三科琢美、宮田明日鹿、村瀬恭子

第1章 開くこと、閉じること

 本章では、「ひらくこと」「とじること」を要素として備えている作品を紹介します。球体に水玉模様が特徴の陶磁器を制作する中島晴美の作品は有機的な形態の連続により、開くことと閉じることを同時に行っています。国島征二による本や腕時計や手紙といったプライヴェートな所有物を束ねてアクリルで固める「Wrappedmemory」シリーズは、タイトルどおり「包まれた記憶」として閉じると同時に、それを作品として提示することで、いわば閉じたまま開いています。ぬいぐるみを切開し、中の綿を抜いて裏がえしたり額縁に入れて絵画にする植松ゆりかは、それらを用いて動物を生贄に捧げる祭壇を造ることで、自身の閉鎖的な精神世界を開いてゆく作品を制作します。アーティストが作品をとおして主体と他者、個と世界を繋げる試みを概観します。

〔展示作家〕植松ゆりか、国島征二、染谷亜里可、手塚愛子、中島晴美、西村一成、ハンス・ベルメール

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国島征二《Wrapped Memory-Bijutsutecho Jan.March.June 1969》1969年 当館蔵
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植松ゆりか《テナガザル》2019年 個人蔵 
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西村一成《不幸よ不幸、幸せか》2006年 作家蔵

第2章 越境する、接続する

 本章では、本来は接点がないもの、従来では関係しえなかったものを創作行為によって接続しようとする作品を紹介します。宮田明日鹿は女性が家庭で行うものとされ美術から排除されてきた手芸を、敢えて美術の場所で「手芸部」として行うことで手芸や日常的な創作活動に内在する造形性を見なそうとします。井口直人は自身の趣味と記録のために長年コンビニで自身の持ち物と顔をコピーするライフワークを行ってきましたが、近年その活動が注目され、現在では他者とのコミュニケーションとしてゲストと顔のコピーを行います。アーティストが自身の模索した表現方法で様々な方法で他者や世界と接続を試みた作品を概観します。

〔展示作家〕井口直人、OJUN、岡崎乾二郎、岡村桂三郎、鬼頭健吾、ゴードン・マッタ・クラーク、サム・フランシス、宮田明日鹿、村瀬恭子

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O JUN《童子日光図》2002年 当館蔵
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村瀬恭子《Sherbet》2008年 当館蔵
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岡崎乾二郎《(左)すっかり冷えてしまった~(右)蓋が持ちあがって~》1997年 個人蔵 撮影:鈴木理策   

第3章 ナラティブと縫合

 本章では「縫合」をキーワードにして、私たちが他者との関係や自己の認識において無意識に「繋ぐ」という作業を行っていることや、一見関係のない出来事にも繋がりがあるということについて考えます。手塚愛子は江戸後期の鎖国を調査し、当時開国によって劇的に変化した日本人の生活や文化の状況と、現代のインターネットにおける仮想空間にて世界に開かれ、世界と繋がる状況を重ね、刻々と変化する日常への期待と不安を織物で表現します。真坂亮平は片方しかないピアスと「彼女はもうひとつピアスをこの部屋で無くした」という文字と併せて展示することで、見るものにとってただ何もない場所が、無くしたピアスがあるかもしれない場所へと新たな関係を生み出します。ツァイ・チャウエイによる筆で円を書いてそれが滲んで消えるという映像作品は、何もないところに新しいかたちを生み出して消えてゆく様をとおして、部分が全体と繋がることを考えさせます。私たちが日々行っている「自分を語る」という表現には様々な「縫合」によって成り立っているということを考えます。

〔展示作家〕岡部志士、ジョアン・ミロ、ツァイ・チャウエイ、手塚愛子、真坂亮平、三科琢美、額田宣彦

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額田宣彦《M6M12 mu480》2022年 作家蔵
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真坂亮平《SHE LOST ONE OF HER PAIR OF DIAMOND EARRINGS IN THIS SPACE》2011年
tai
ツァイ・チャウエイ《円2》2011年 森美術館蔵

関連イベント

講演会1

アーティスト・トーク〈手塚愛子×宮田明日鹿〉

「閉じたり開いたり  そして勇気について」
聞き手:今泉岳大(当館学芸員)

日時:4月13 日(土曜日)午後2時~3時30 分

場所:当館1階セミナールーム

参加費:無料

定員:50 人(応募多数の場合は抽選)

講演会2

「閉じたり開いたり  そして勇気について(2)」
登壇者:手塚愛子(出展作家)×天野一夫(豊田市美術館学芸員)

聞き手:今泉岳大(当館学芸員)

日時:6月16日(日)午後1時30分~3時

内容:本展の出展作家手塚愛子氏が今回出展したシリーズおよび、これまでの作品について天野一夫氏とともに振り返ります。また今後の作品の構想や、美術の展開について思うことなどについてお二人にお話しを伺います。

参加費:無料
申込:不要、先着50名(当日午後1時から整理券を配布、定員に達し次第終了)

ワークショップ1 

a.「出張手芸部!in岡崎」with宮田明日鹿(本展出品作家)
4月28日(日)、6月15日(土)
b.「破ったり、つなげたり描くことの不思議さを体験しよう」with三科琢美(本展出品作家)
5月5日(日)
c.「コピー機を使ってつくるラミネート下敷」with井口直人(本展出品作家)
5月18日(土)
d.「ひとつ上をいく缶バッヂ」
6月2日(日)


いずれも午後1時30分~4時30分まで随時開催
定員:なし。当日混雑する場合は制限する場合がございます。
場所:当館1階ホワイエ
参加費:無料
申込:不要

ワークショップ2

「みんなでつくる!毛糸をむすんでつなぐインスタレーション」
来場者が継ぎ足してゆくことで増殖する、毛糸を使ったインスタレーションを館内に設置します。
日時:会期中随時開催
場所:当館1階ホワイエ
参加費:無料

ギャラリートーク

  • 日時:4月29日(月・祝)、5月25日(土)、6月9日(日) 各日とも午後2時~午後3時
  • 会場:当館1階展示室
  • 参加費:無料(※ただし、当日の観覧チケットが必要です)
  • 担当:当館学芸員

 

 

関連資料

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お問い合わせ先

美術博物館

電話番号 0564-28-5000ファクス番号 0564-28-5005

〒444-0002岡崎市高隆寺町峠1番地
開館時間 10:00から17:00まで(最終の入場は16時30分まで)